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KYOTARO HAYASHI

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180821

駅の終電はとっくに終わり、薄暗い街灯に照らされながら

 環八沿いで手をあげる。通り過ぎる白い空車のタクシー。

 目の前で回送に変わる緑のタクシー。

みんなも疲れている、午前3時。そりゃ乗せたくないわなとため息をつく。

  小さくクラクションを鳴らし、現れたのは白い空車のタクシーだった。

「 こんなところで人が乗るなんて思ってもいなかったから、通り過ぎちゃいましたわ。」

 とヨボヨボの老人が抜けた歯を出しながら笑っている。少しタバコ臭い車内。

すぐに私を窓を開ける。なんとなくの罪悪感で暑いふりをする。 

私は会釈をしながら話し続ける老人のことばを破る様に 

「梶ヶ谷の交差点を右に曲がってください」

と言った。老人は黙り、はいはいとにこやかに頷く。ゆっくりと車は走り出す。 

何かと話しかけてくる老人 。

「 あんな場所でお遊びですか?」

「いえ、仕事です。」

「 そーですかー遅くまでお疲れ様です。」

「いやいや、おじさんだって夜遅くまでやってらっしゃいますでしょ。 」

たわいもない話は続く。 

「あたしは夜だけなんでね、昼間はゆっくりしておるんですわ。

 あんなところで1人でかわいそうだったからUターンして来ちゃいましたよ」

「いや、たすかりました。感謝してますありがとうございます 。」

「へへ、見逃してしまったあたしのせいですね。」 

「いえ、とんでもないです。」 

よく喋るおじいちゃんだなと思いながら、夜の多摩川を走るタクシー。 

春にはここは夜桜が綺麗なところ。 

「ここはいつも桜が綺麗ですよー来年見れるかなーあたし。」 

「どうですかねぇ」とよくも考えずに答えながらイヤホンを探す。

「あたしねぇ末期ガンなんですよねー。満開の桜でも見にこれないんですよ」

私はちょっと耳を疑って聞き返す。 

「え、?癌なんですか?」 

「そうなんですよー、でもこうして若いおにーさんと話せてとても楽しいですよ、へへ」 

 僕は見つけたイヤホンを鞄にしまった。

車は日の出前の薄暗い光の中でゆっくりと走る。 

 

Tuesday 08.21.18
Posted by KYOTARO HAYASHI
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